バトルの後は名刺交換で円滑に進める、日本式eスポーツビジネスのすゝめ

eスポーツというと、得てしてプロ選手達が個人ないしチームを組んで、決められたルールの中でしのぎを削り合い、華々しく賞金パネルとトロフィーを持っている様な様子を思い浮かべる人は多いだろう。大体のメディアの報じ方はそうであるし、現にその手のプレイヤーが多くの参加者を惹きつけているのもまた確かだ。しかし、そういった流れとは違う「交流のための」eスポーツというあり方を定着させつつある活動もまた存在する。そしてその対象は一般的にイメージされる若年層中心ではない、ビジネスに携わる社会人だとしたらーーそれはとても、ユニークなのではないだろうか。

第2回 eスポーツ企業対抗戦のトップ絵

岡山から芽吹く企業交流の芽

 

 9月29日、岡山県eスポーツ連合(主催)と山陽新聞社(共催)は、企業関係者がeスポーツを通じて交流し、ビジネスにも役立つチームワークや課題解決能力を体感できる『第2回 岡山県企業対抗eスポーツ大会』を令和7年12月14日(日)に岡山コンベンションセンター レセプションホールにて開催すると発表した。本大会は、eスポーツという共通の話題を通じて企業間の新たな交流を創出し、地域の活性化に貢献することを目的としている。特に、今年のメインイベントである企業対抗戦については、 第一回の12社上限から16社へと拡大。今回実施される予定のタイトルは『鉄拳8』、『グランツーリスモ7』の2タイトルで、計32社が参加可能となっている。

 

 昨年も同タイトル、12社で争われた今回のイベントについては同様のルールにて試合が展開される。特にゲーマー間で問題となる初心者と上級者の腕前の差については、ハンディキャップを設定する事である程度その差を埋めるとの事である。とはいえただ企業の代表だけが戦うわけではなく、いくつかのイベントも付随して行われる。国スポ岡山県代表経験者、FIA選考レースでの優勝経験者などを招いてのドリームマッチの開催や、岡山の企業社長・代表者4名によるエキシビジョンマッチも実施。eスポーツという土俵だからこそ実現し得た社長・会長同士での白熱した戦いを見ることが出来る機会は、人生においてそう多くないだろう。

 

 なお、本イベントに合わせて鉄拳部門、グランツーリスモ部門にエントリーされたユーザー向けに、大会直前の12月7日までの間、ビックカメラ岡山駅前店の3階eスポーツコーナーが練習会場として適時使わせて貰えるという大盤振る舞いである。これで当日までゲームの腕を磨く事が出来るが、くれぐれも帰宅時間にはご注意いただきたい物である。

 

 同時並行して子供向けeスポーツ体験会の開催や名刺交換会、懇親会の開催も予定されており、企業登録者であれば参加費は無料となっている。その特性上、ガチンコマッチというものではなくあくまで交流戦としての色合いが強い同イベントであるが、後援に岡山市が、共催に山陽新聞社がついており特集まで組んでの盛り上げぶりとなっているため、地域における企業活性化の要素としては非常に強力なイベントと認知されているのだろう。

 

アフター6で”撃ち合わせ”

 

 地方自治体が積極的に関わるケースもあれば、より大きな省庁が後援についてイベントを盛り上げているケースも存在する。それが社会人によるeスポーツリーグイベント「AFTER SIX LEAGUE」である。

after six leagueのトップ画像

 TOPPANホールディングスのグループ会社であるTOPPAN株式会社(本社:東京都文京区、代表取締役社長:大矢 諭、以下 TOPPAN)、株式会社ディスクシティエンタテインメント(本社:神奈川県横浜市、代表取締役社長:三田 大明、以下 DiCE)、京王電鉄株式会社(本社:東京都多摩市、代表取締役社長:都村 智史、以下 京王電鉄)、株式会社QTnet(本社:福岡県福岡市中央区、代表取締役社長:小倉 良夫、以下 QTnet)は、有限会社池田加工が運営するeスポーツ団体であるeS-Leagueと共同で、社会人eスポーツプレイヤーを対象にした「AFTER 6 LEAGUE™」 season 6 の参加企業の受付を2025年8月28日より開始したと8月末に発表されている。現在開催予定のタイトルは2つあり、日程は以下の通りだ。

 

「Apex Legends™」は初戦から2025年10月10日(金)、11月14日(金)、12月5日(金)の3日間実施。開催はオンラインとなり、69社募集枠が存在する。こちらについてはすでに出場枠が決定している状況で、10月10日より「撃ち合わせ」がスタートする。もう一つのタイトルは「Pokēmon UNITE」。2026年1月21日(水)、2月4日(水)、2月18日(水)の3日間のスケジュールで実施され、オンライン上でのイベントとなる。募集枠は16社。こちらは公式サイトで後ほど仔細が出るとのことだ。他の部門として今後「PUBG Mobile」「eFootballシリーズ」「GeoGuessr」も開催予定との事である。

 

 本イベントは完全オンラインでありながら現在シーズン6まで続けられており、season 4 終了後に実施した出場企業アンケートでは、「『AFTER 6 LEAGUE™』に出場したことで社内でのコミュニケーションが増えた」という回答が88%、「他社との交流機会が増えた」という回答も61%となり、「AFTER 6 LEAGUE™」が企業内・企業間交流に役立っているということが裏付けられた。「AFTER 6 LEAGUE™」に出場したことが商談や採用活動に役立った、広報に活用した等、ビジネスに与える好影響についての回答も多数寄せられたという。なお、第4回・第5回については経済産業省が後援でついているほどの認知度の高さとなっている。

 

 特に企業間の連携を密に図る上でコミュニケーションは重要であり、何よりもその取っ掛かりとしてお互いに共通する趣味を見出すというのはビジネス上非常に有効である。これまであった「ゴルフ」「麻雀」「ボウリング」「釣り」などの趣味兼ビジネス交流の場として、e-Sportsが用いられる事が今後大いに増えていくのではないだろうか。専業選手として活躍する以外にも「ゲームが上手い取引先のあの人」として注目される道も、出来てくるのかもしれない。

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