eスポーツに広がるビジネスの裾野 様々な形態で勝機を掴む

 開始当初は白い目で見られる事も多かった産業が、今や一大ジャンルにまで拡大することはよくある話である。そしてそういった産業が成熟する中で、産業そのものを先鋭化させていくのかユニークな形で展開していくのかというのは様々だ。今回は盛り上がっているeスポーツ業界から、幾つかのユニークなニュースを拾ってみる事にしよう。

エンターテインメント化するeスポーツ競技のあり方

 10月22日、eスポーツチーム「SCARZ」を運営する株式会社XENOZ (本社: 東京都渋谷区, 代表取締役: 洞本宗和) は、ビクターエンタテインメント株式会社(本社: 東京都渋谷区, 代表取締役: 小野朗)と共同で、音楽とeスポーツを融合させた新プロジェクト「MeSTAGE(みいすてーじ)」を始動するとの発表を行った。

MeStageの画像

 MeSTAGEは、通称「みいすて」として、音楽とeスポーツという2大カルチャーを掛け合わせ、年齢やスキル、国籍を問わず誰もが楽しめる“新しいエンタテインメント体験”を発信できるコンテンツクリエイターを作り上げるプロジェクトだという。

 本プロジェクトが発足した理由として挙げられているのは、eスポーツという競技そのものの複雑さだ。eスポーツは世界中で急速に成長を遂げ、若者を中心に一大カルチャーとしての地位を確立している事は周知の事実だろう。だがその一方で競技性の高さや専門用語の多さ、事前に学習するべき内容の存在や、プレイヤーと観客の距離感の独自性など、この分野に初めて触れる人々にとっては敷居が高く感じられる場面も少なくない。

 こういった障壁を緩和するべく、「音楽」との融合によってeスポーツをより開かれたものにし、誰もが気軽に、そして心から楽しめる文化を創造していきたいと考えているとの事だ。eスポーツ競技に対してただ競技を実施するだけでなく、それに付随してライブ演奏、パフォーマンス、eスポーツ競技のサウンド演出などの要素を投入。五感を刺激する体験型のイベントを通じて、eスポーツを「観る・聴く・感じる」新しいエンタテインメントへと進化させていきたいと考えているようだ。本企画に対し、バーチャルYouTuberである「DELUTAYA」 と「煌イヴ」がMeSTAGEのメンバーとして加わることも発表された。

 各種スポーツにはハーフタイムショーなどの演目がきっちりと設けられており、競技に詳しくない人間であってもそういったショーを観たり、あるいは会場内での喫食といった要素を楽しみにしながらスポーツを楽しんでいく流れが生まれている。これは既存のスポーツ業界が客を取り込む為に様々な工夫を凝らした結果得られた知見である。翻って現状のeスポーツ業界は、海外でのオンラインベッティング要素はいざ知らず、日本国内において競技としての盛り上がりが「内輪だけ」に留まりがちな傾向にある。ショービジネスとして成功させていく為には、ただ観戦をする以外の付随要素というのはいずれ必要になっていくものである。

 もちろん恒常的・定期的にイベントが開催される各種スポーツとは違い、eスポーツ文化はアーケードゲームやPCゲームの対戦要素や競争要素を軸として生まれている。そのためこういったエンターテインメントを楽しむ要素に目が向きにくい側面はあるだろう。だからこそ、今後の市場定着に向けていかに観客を確保していくかを各イベンターがしっかりと設定していく必要性はあるだろう。

トッププレイヤーを助ける眠りの効果

 エスエス製薬株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:ニクヒレッシュ・カルラ)は、睡眠改善薬「ドリエル」(指定第2類医薬品)において、eスポーツチーム「Good 8 Squad」とのコラボレーション動画を10月22日に公開した。

 Good 8 Squadは、2025年3月9日に開催された「Street Fighter League World Championship 2024」で優勝を果たした事で注目を集めたチームである。所属選手であるカワノ選手は、サウジアラビアで開催された「Esports World Cup 2025」において9位にランクイン、さはら選手は「Ultimate Fighting Arena 2025」にて優勝を収めるなど確かな実力と存在感を持ったチームだ。

 そんな両選手ともに悩みの種となっているのが、重要な競技前に訪れる「不眠」である。遠征先での環境の変化などもあって寝付けない状況は、確実に翌日のパフォーマンスに悪い影響を与えてしまう。そういった状況で睡眠に対して導入効果をもたらす同社の睡眠改善薬ドリエルについて、両選手共に「使用してみたい」という意思がある事を動画内で表明している。なおエスエス製薬並びにドリエルはブランドとして、Good 8 Squadのスポンサーとして契約を結んでいるとの事だ。緊張を強いられるトッププレイヤーでなくとも、広く開催される大会やイベントの前で睡眠に悩むプレイヤーは星の数ほどいる現代。最適な調子で競技に臨む為に、きちんと適切な睡眠を取って最大のパフォーマンスを維持する手助けとなるだろう。

 なお余談ではあるが、記事執筆中の10月23日時点で株式会社ブレインスリープ(本社:東京都千代田区、代表取締役:廣田 敦、以下「ブレインスリープ」)が、日本のプロeスポーツチームのDetonatioN FocusMe(以下「DFM」)と睡眠サポートスポンサー契約を締結した事が発表された。競技によって必要とされるプレイスタイルや求められるスキルなどが大きく異なるため、プレイヤーが抱える睡眠課題も様々あるとされている。eスポーツ業界全体の睡眠環境改善に貢献していきたいと同社は述べている。

 

コメントは受け付けていません。