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日常的に使用され、耳にする機会が多くなった「RTA(アールティ―エー)」。リアルタイムアタックの略称で、ゲームのプレイスタイルの一種です。現在では、ゲーム開始時からどれだけ短い時間でクリアできるかを実際のプレイ時間で競い合う、いわば人間競技のようになっています。その、人間離れした技の数々に注目が集まり「RTA In Japan(アールティ―エー インジャパン)」という大規模な大会が開催される程。

今回はそんなRTAについて、ルールや競技性、RTA In Japanの内容や、大会で話題となったアーカイブをご紹介し、その魅力に迫ります。

RTA in Japan Summer 2022
出典:RTA in Japan公式Twitter

RTA(アールティ―エー)とは?

RTAとは「リアルタイムアタック(Real Time Attack)」のことを指し、コンピューターゲームのやり込み要素の一種です。

ゲーム内部で計測される時間ではなく、セーブやリロード、休憩時間も含めあらかじめ定められたゲーム開始時から目標地点に到達するまでの現実の所要時間を丸々計測し、短さを競い合います。

比較されることの多いTAS(Tool-Assisted Speedrun及びSuperplay)はエミュレータでツール等を利用して時間短縮を行いますが、RTAは基本的に人の手によって行われるといった特徴があります。

挑戦するプレイヤーは「走者」と呼ばれ、自らレギュレーションを決める

挑戦するプレイヤーを陸上競技のように「走者」と呼び、走者はゲームをスムーズにクリアするために試行錯誤を重ね、ルートを記憶し、何度も練習を重ねた上で挑みます。

レギュレーションによっては、仕様の他にバグ技を扱うことを認められる場合が多く、バグ技を巧みに利用して実時間の短縮を試みる走者も存在します。

レギュレーションは基本的に走者が定めており、サブクエストなど全てコンプリートした状態でクリアすることを「100%」。達成率は関係なく、ただクリアだけを目指したRTAを「Any%」と表します。

レトロゲームから最新ゲームまで、どんなゲームでもRTAができる

RTA レトロゲー

取り扱うゲームタイトルの豊富さも人気になった理由の1つです。実時間を計測する開始地点と終了地点を決めることさえできれば、どのような種類のゲームタイトルでも走者として挑戦することができます。

発売から長い期間が経っているレトロゲームはやり込み短縮の研究が進んでいるため、最新のゲームと変わらないくらい、注目を浴びているというのも面白い点。

「昔遊んでいた懐かしのタイトルの思わぬ攻略法」や、「走者の磨き上げた高度なプレイイング」、「バグと仕様を掛け合わせた手法」といった未知の領域を垣間見ることで、観戦者は湧き上がります。
どのようなゲームタイトルでも変わらない熱量で親しまれ、多くの視聴者に愛される点はRTAの魅力の1つです。

「RTA In Japan(アールティ―エー インジャパン)」とは

RTA IN JAPAN
出典:RTA in Japan公式Twitter

「RTA In Japan」とはゲームのRTAを行う、大規模なイベント。日本で開催され、参加者によって様々なゲームタイトルのリアルタイムアタックを観戦することができます。

走者が集結した会場で挑戦を見届けることができる、オフライン大会「RTA In Japan」とオンラインで開催される「RTA in Japan Online」の二種類があります。これらの大会は、年に1回ずつ行われ、24時間、4~5日間途切れることなく行われます。

RTAの大会は年々注目度が上昇している

ちなみに、RTAの大会は日本国外でも行われていて、ヨーロッパで開催される「European Speedrunner Assembly」や米国で開催される「Awesome Games Done Quick」といった大会も。リアルタイムアタックという競技が全世界から注目されていることが伺えます。

「RTA in Japan 2020」ではNintendo Switch用ソフト『ファイナルソード』のRTAで同時視聴者が6万人超を記録し、Twitterにてトレンド1位を獲得。「RTA in Japan Summer 2021」ではNintendo Switch用ソフト『リングフィットアドベンチャー』にて、同時接続者数は18.8万人を超え、年々注目度が上昇し、ゲーマーたちの一大イベントとなっています。

RTAはeスポーツではないものの、eスポーツのような競技性を持っているといっても過言ではありません。eスポーツの大会について詳しく知りたい方は、「eスポーツの大会とは?」をご覧ください。

「RTA In Japan」は賞金が出るの?収益は寄付される

「RTA In Japan」では走者に賞金が出ません。海外のRTA大会では、賞金が出るものもありますが、「RTA In Japan」は参加料や賞金といったものは、現在定められていません。

大会ではありますが、どちらかというと「学会発表」のような側面が強く、”研究の成果や磨き上げた腕前を披露し合う場”となっています。賞金が出ないことで純粋な気持ちでゲームと向き合い、挑戦がしやすい環境なのかもしれません。

RTAの大会はチャリティーイベントとしての側面が

主催者側は本大会を営利目的で運用することを考えておりません。日本国外で実施されるRTA大会では、慈善事業を行う団体へ寄付をする、「チャリティーイベント」としての側面もあることを踏まえ、それに習った運営を行っています。

実際に、2018年に開催された「RTA in Japan 3」では初めて公式グッズが販売され、その売上金の一部が北海道胆振東部地震による被災者へ寄付されました。

2020年に開催された「RTA in Japan Online 2020」では、Twitchで得た8月分の利益・約270万円を東京大学の”新型コロナウイルス感染症緊急対策基金”に寄付。公式グッズの売上金の一部は国境なき医師団が主導する、”新型コロナウイルス感染症危機対応募金”に投じられています。

毎年、グッズの売上金やTwitchで得た収益を寄付しており、赤字でも黒字でもない運営を行っているようです。

RTAの大会に対し、プレイヤーとプレイヤーが対戦するeスポーツの大会は、賞金が多く出るものが多数存在しています。詳しく知りたい方は「eスポーツ 賞金」をご覧ください。

RTAとゆっくり解説の関係とは?

RTA ゆっくり 解説
引用:東方ダンマクカグラ公式YouTube

RTA動画には、「ゆっくり解説」を用いたものが多くあります。ゆっくり解説とは、『東方project』から派生した「ゆっくり」と呼ばれる二次創作キャラや合成音声を使用した解説動画のこと。

「ゆっくり魔理沙」と「ゆっくり霊夢」が会話形式で茶番を交えながら解説をするため、難しい話題や堅苦しくなりがちなジャンルでも明るい雰囲気で視聴者に伝えられます。

「ゆっくり解説」は単調な作業の繰り返しや堅苦しくなりがちなRTAと親和性が高く、テンポの良い動画となるため、視聴者が飽きずに最後まで見られるという利点があります。
ゆっくり解説と共にリアルタイムアタックの内容を説明している動画は現在数多く存在しているため、興味がある方は視聴してみてくださいね。

「RTA in Japan Summer 2022」でおすすめのRTA動画をご紹介!

ここからは、「RTA in Japan Summer 2022」で行われた競技の中で、特に面白かったおすすめのRTA動画のアーカイブをご紹介します。

おすすめのRTA動画No.1:『Paris Chase』Any%

2006年に海外で発売された、パリの街中をレースするというシンプルな内容のゲーム。”対戦相手となる車をセーヌ川に突き落とすことで、敵の車は走行不可となり自動的に勝利が決まる”というゲームの仕様を利用してクリアタイムの短縮を狙います。

あらゆる手段を使って敵の車をセーヌ川に突き落としていく様子が面白く、会場は大盛りあがり。「ナイスセーヌ!」がTwitterのトレンド入りをする程、注目を集めました。

レースのフィールドによっては真面目に走る必要もあります。しかし、それすらも”直線をドリフトしながら進むと、通常よりも100km/h以上速く走れる”という仕様を活かしてタイム短縮をしていく徹底ぶり。

破茶滅茶ながら、走者・kamia氏の熟練したハンドル捌きを見ることができます。

おすすめのRTA動画No.2:『ELDEN RING』グリッチレス+Any%

2022年2月に「フロム・ソフトウェア」より発売された、大人気タイトル『ELDEN RING』をバグ技なしの正攻法で、1時間30分以内のクリアを目指すRTAです。

走者・AltF4氏は素性に侍を選択し、筋力をひたすら強化。武器「大蛇狩り」を手に、数多くのプレイヤーたちが苦戦を強いられてきたボスたちを次々と華麗に倒していきます。こまごまとした時間短縮テクニックと共に、AltF4氏の磨き上げられてきた高い技術力に誰もが驚かされます。

公式ではメインルートのみなら約30時間でクリアできると明言されている同タイトルを、たった1時間16分でクリアするその方法は一見の価値ありです!

おすすめのRTA動画No.3:『スーパーマリオブラザーズ』Warpless

1983年に発売された、誰もが知っているであろうゲームタイトル『スーパーマリオブラザーズ』。RTA in Japanの花形競技ともされており、たくさんの挑戦者を抱えるタイトルです。記録を所持しているトップランナー4人が、「ワープ」を使用しない”Warpless”のレギュレーションで挑みます。

走者はまんまる氏、kosmic氏、nuirapa氏、DAI氏。4人のプレイが1つの画面に映し出され、同時に観戦をすることができます。

どの走者もほぼ同じ動きをしており、たった1つのミスで順位が変わる、1秒単位での争いに目が離せません。

人々が熱狂する、RTAの魅力とは?

年々視聴者数が増加する「RTA in Japan」の開催中は、毎回Twitterのトレンドに取り上げられる程。注目度が上がり続けているRTAはこれからも更に発展していくであろうゲームジャンルの1つでしょう。

多くの人が惹きつけられる魅力には、下記が挙げられます。

1. 己の技術と向き合い、高め続ける、自分との戦い

eスポーツ競技は基本的に、プレイヤーたちが対戦する対戦型ゲームを取り扱うことが多いです。それに対し、RTAはソロプレイ用のタイトルを扱うものが多く、研究をし、自身の技術力を高めることで、クリアタイムの短縮を狙っていきます。

スポーツで例えると陸上競技や水泳のような側面を持っており、自分自身と戦い続けるという魅力があります。

新たな記録が出たら陸上選手や水泳選手に対して賞賛の声があがるのと同じく、RTA走者に対して「おめでとう!」とその努力を称えるのです。

2.様々なゲームタイトルにスポットが当たる、多様性

ゲームタイトルが限定されず、どのタイトルでもリアルタイムアタックに挑戦できるという自由さとカジュアルさは魅力の1つです。

人気ゲームや最新ゲーム、レトロゲーム、聞いたこともないようなマイナーゲーム等、多種多様なタイトルを題材にすることが可能です。そのため、視聴者も走者も幅広いジャンルのゲームを楽しむことができます。

見たことのないタイトルと出会うきっかけになり、自分の世界が広がるのは「RTA in Japan」の醍醐味かもしれませんね。

3.RTAを通して築かれるコミュニティ

「RTA in Japan」はタイトルが限定されていないことから、違うゲームをプレイしている人たちが交流できる場の1つとなっています。

走者たちは会場で名刺交換をして積極的に交流をする方も多く、SNSや配信を通じて仲良くなる事もめずらしくありません。オフラインイベントで知り合ったりとRTAを通じて、コミュニティの環が広がっているようです。

まとめ

RTAはゲームのやり込み要素の1つで、研究して導き出した手段や磨き上げた技術を巧みに利用し、ゲームクリアまでの実時間を短縮する競技のことです。

「RTA in Japan」という大規模な大会が毎年開催されており、走者、視聴者共に熱狂し、楽しまれています。

この記事では、ルールや競技性、その魅力と「RTA in Japan Summer 2022」の中から特に興味深かった、おすすめのタイトルのアーカイブについてご紹介しました。

幅広い層から愛され、支持されているRTAは今後どのような走者が現れ、どのような超絶技巧なプレイを人々に魅せてくれるのか。競技として、どのような進化や変化を遂げていくのか、ますます目が離せません。

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