eスポーツチーム「VARREL」所属のストリーマーが契約解除 eスポーツプレイヤーに求められるコンプライアンス

 10月21日、eスポーツ関連事業を手掛けるCELLORB(神奈川県横浜市)はeスポーツチーム「VARREL」所属のストリーマーである「布団ちゃん」との所属契約を解除したと発表。『当社と「布団ちゃん」との間の契約条項およびコンプライアンス方針への抵触が認められたことを受けた措置』が契約解除理由であるとしている。

 これに関しVARREL側からは直接言及されてはいないが、同配信者は20日にカラオケボックスから配信を行っている。その際にカラオケボックスのメニュー表で自身の陰部を隠し、歌いながらTwitchで配信を行っていたとの事である。これに対し「私の不誠実、不道徳極まりない配信内容で、スタッフ、チーム並びに関係者、VARRELを応援して頂いている皆様方にご迷惑おかけしたこと、謹んでお詫び申し上げます。」と本人は述べている。

 しかしeスポーツ界隈におけるプレイヤーや参加者の問題発言や行動は、なにもこれに始まったものではない。過去に幾つもの事例が存在する。

暴言問題が山積するeスポーツ業界

 日本国内でこの手の騒動として有名になったものは、「たぬかな」選手の契約解除だろう。プロeスポーツチーム「CYCLOPS athlete gaming」(大阪府)は2022年2月17日、動画配信内での発言が問題視されているプロゲーマー「たぬかな」氏との契約を解除したと発表したのである。併せて「ファン、スポンサー各社、関係各所の皆さまに多大なご迷惑、ご心配をおかけしました」と謝罪を行う事となった。RedBull側もこの騒動を受け、同氏の名前を登録リストより削除する対応を取った。この際問題とされた発言は「(身長が)170ないと、正直人権無いんで」というものである。これをきっかけに過去の発言が掘り起こされ、本人が毒舌を売りとしている配信者であったこともあり大炎上を引き起こしたのだ。

 この際に用いられる「人権」という言葉は、ゲーマーの間で交わされるスラングの一つである。ソーシャルゲームなどで特に顕著だが、あるキャラクターやユニット、スキルなどがそのゲーム内において非常に有益である場合、それを所持している・行使できる事が「絶対条件」の様に定義される事がある。逆に言えば、そういった事が出来ないユーザーはお呼びではないといういわば村八分的な扱いをされる事があるのだ。この時有利な物を所有している事を「人権がある」、キャラクターであれば「人権キャラ」などと呼ばれたりするのだ。このスラングの意味合いはともかくとしても、公然と人前に向かって放つ言葉としては非常に誤解を招きかねない。

 更に直接的な表現の問題では、プロeスポーツチーム「REJECT」が2022年5月3日に発表した『SaRa選手の暴言に対する対応』がそれに当たる。同社所属の他の選手が配信中にSaRa選手の声が入り込むシーンで「なんでそこクリアリング(目視確認)すんの?障害者やろ マジで」という発言を行ったのである。これに対しREJECT側は謝罪を行うと共に、2022年12月末までの選手活動停止と当該期間の選手報酬全額カット、社会貢献活動への参加を措置として講じたのである。

 これもゲームをプレイする際に、特に過激な発言を好むプレイヤーから出る暴言ではあるのだが、そういったワードが口をついて出る様なプレイヤーは確かに一定数存在する。またゲームにおける手順を遵守する余り、過激なチャットを飛ばすユーザーにも筆者は出会った事がある。

 海外では先日、FlyQuest所属のLeague of Legendsプロプレイヤー、Gabriël “Bwipo” Rau選手が「女性の月経周期は男性とは全く異なり、女性が経験していることを支える適切なサポートシステムが存在しない。」「女性が月経周期の悪い時期に競技ゲームをしている場合、私の意見では、女性として競技ゲームをプレイすべきではない時期が月に一度ある」と述べた事で大きな波紋を呼んだ。

 この他にもまだまだ事例は多く存在するが、総じてeスポーツ選手が絡む不祥事としては発言の問題や素行の問題が取り上げられる。これは同業界にとって大きなイメージダウンを招いてしまう。

今後の対策の必要性

 この様な事を引き起こさない様にするためには、2つの面でのアプローチが必要と捉える。一つは所属選手の「プロ選手であり、社会人である」という認識の植え付けだ。どういった発言を行うにせよ、社会人であるからには相応の礼節が求められる。それは肉体を使うプロスポーツプレイヤーであれ、盤上の激闘を行うプロ棋士であれ、プロを名乗るからには「真っ当な」礼儀に対する教育を施された上でエントリーする事になる。相手を重んじる事に対する風潮の欠如は、何もeスポーツだから礼儀が悪くなるという訳ではないのだ。

 もう一つは「身内のノリを外に持ち出さない」事である。仲のいい友人達とプレイするならば多少の暴言や乱痴気騒ぎも許容範囲になるだろうが、プロプレイヤーや配信者は自身がメディアに露出するという事も仕事のうちとなる。その外に開かれた環境に対して内輪ノリを剥き出しにしてしまえば、それは到底仕事に対してまともではないと思われるだろう。

 もちろん大前提として、意識するまでもなく極度の悪口や問題行動を引き起こさないだけの常識を備えていてこそこれらが成立する。逆にそういった無法が許されるような業界と思われてしまえば、スポンサーはもちろんのこと社会が許容しなくなるだろう。「ただゲームが上手い」だけでは若者の憧れになることはできない現状をしっかりと認識した上で、憧れられるプレイヤーが集う業界となる事を切に願う。

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