Yokosuka e-Sports Scholarship第3期生の募集開始 横須賀市から新たな名プレイヤーが生まれるか
ゲームと協力し合う自治体の活動が徐々に地域において認知度を上げつつある中で、横須賀市はその先頭に立っていろいろな施策を打っている。そんな同市が今回「スカラシップ」の第三期生を募集しているとの事である。高校生を対象とした企画ながら、その本格的な手法も含めて取り上げていく。
横須賀市の取り組みと確かな戦績

10月20日、横須賀市は、市内在住もしくは在学の高校生(1・2年生)から選抜し、生徒の選手キャリア育成支援を行う、Yokosuka e-Sports Scholarship制度の第3期生の募集を開始したと発表。選抜された高校生は、希望するタイトルのコーチングと自宅のPC環境整備に加えて、さまざまなキャリアを体験することにより、eスポーツ選手という目標だけでなく、eスポーツに関わる様々なビジネスに対する知識と、可能性を感じてもらうことを目的とする制度であるとの事だ。
選抜された生徒が、学んだことを学校で仲間に還元するなど、市内の高校生のレベルの底上げにも寄与する事を狙っており、横須賀市はYokosuka e-Sports Partners制度に基づく民官連携で、次世代のキャリア育成も進めていきたいとの事である。本制度を利用し育った人材が、横須賀市を中心にeスポーツ業界やエンターテインメント業界に就くことでeスポーツのプレイヤーではないライフスタイルを選んでも、高い知見を持つ人材として活躍させていく目論見があるのだろう。
この手の企画は大体お手盛りかつともすれば「型にはまったような」企画であるという印象が強いだろうが、本案件についてはその予測は的外れとなりそうだ。まず募集に関する要件が徹底しており、選考タイトルから既に「自身の年齢レーティング内、かつ世界大会レベルの大会が行われているタイトル(YOKOSUKA e-Sports CUP、stage0、NASEF JAPAN全日本高校eスポーツ選手権に採用されているタイトルを優遇)」という条件がついてくる。
選考対象となるのは市内在住もしくは市内高校に在学中の高等学校1年・2年生であることで、1年間にわたり、eスポーツ大会や定期コーチング、各種イベントに積極的に参加でき、保護者の同意があること。令和7年10月20日(月曜日)~令和7年11月7日(金曜日)が応募期間となっており、そこから二度に渡る選考を経て最大5名がスカラシップの対象として選ばれる。

ここまでであればただの厳しい選考大会だが、そのバックについている団体は本物である。まずPCのハードウェアを吟味するユーザーならばおなじみのメーカーである「MSI」が全面協力を果たしている。自宅PC等環境整備を今回のスカラシップのサポート内容としており、メーカー側の協力でeスポーツタイトルに馴染みやすい最適なマシンをセッティングしてくれるのである。廉価となりつつあるとはいえ、まだまだeスポーツ向けのマシンは相応にお値段が張る代物である。そういったものに対してサポートが貰えるのは、高校生の時分としては非常にありがたいものだろう。

また現在第2期生が活動中であり、第1期生は2023年11月から2024年11月までの1年間、みっちりとコーチングを受けて腕を磨き上げたと横須賀市公式サイトにて報告が行われている。第1期生にコーチングを行ったのは、eスポーツプロチーム「BC SWELL」の面々であり、プロプレイヤーとのトレーニングマッチといったプログラムを組んでプレイングのスキルを磨いたとの事だ。今回コーチングしたタイトルはVALORANTだが、最高ランクのプレイヤーであるレディアントに肉薄できる実力を持ったプレイヤー3名を輩出。そのうち2人はイモータルランク到達、うち1人はイモータルランクの最高峰であるイモータル3まで辿り着いたとの事である。この結果を見ても、いわゆるお手盛りではない「本格的な官民協力企画」である事がわかるだろう。

なお横須賀市はこういったeスポーツの大会について、なんと横須賀市の公式サイトにて主催した公式eスポーツ大会の告知を大々的に掲載し、かつ専用のページまで作り上げて積極的に開催をもり立てている。2019年12月にスタートした、eスポーツに関わる人々によって地域コミュニティの活性化、および新たな文化が定着することを目指す事業「Yokosuka e-Sports Project」はどんどんとその影響力を増していると見て良いだろう。東京と横浜と鎌倉に挟まれているが故に、新しい活路をeスポーツやメタバースなどの文化に見出したとは東京ゲームショウ2025におけるブース担当者の言である。日本におけるeスポーツの若年層コーチングという新しい事例を以て、より一層プレイヤーの拡充と文化の浸透を図っていく事を大いに期待したい所である。