衛星カジノ閉鎖の裏で進む再構築 – マカオが描く「直営リゾート」戦略
マカオ政府と主要カジノ運営会社のSJMホールディングスとGalaxy Entertainment Groupが10月末、2つの衛星カジノを閉鎖した。観光需要が回復する中での再編は一見すると「縮小」に映るが、実際にはマカオのカジノ産業が新たな成長構造へ移行していることを示している。

World Casino Directoryによると、SJMが運営する「Emperor Place Casino」(グランドエンペラーホテル内)は10月30日に閉鎖し、翌日にはGalaxy系の「Waldo Casino」も営業を終了した。両施設はいずれも、ライセンスを保有する大手企業から運営権を借りて営業する「衛星カジノ」に分類される。かつてマカオの成長を支えた仕組みだったが、近年は収益配分や責任の所在が複雑化し、監督の透明性が課題となっていた。
こうした背景を受け、マカオゲーミング産業の規制機関であるDICJは制度の再編に着手した。2022年の改正カジノ法で第三者による運営を原則として禁止し、ライセンス保有企業が自ら管理・運営を行う「直営型」へと転換を促した。結果として衛星カジノの閉鎖や統合が加速し、業界全体が再構築の段階に入っている。
カジノ規制強化が導くマカオの新たな成長モデル
マカオのカジノ市場では、法廷改正を機にライセンス制度の透明化と経営の集約化が進んでいる。
こうした再編の動きは海外メディアでも注目されており、「2022年の法改正により、ライセンス保有企業が直接所有していない施設での営業が禁止され、衛星カジノが親会社に吸収されていく流れが進んでいる」と報じている。
従来の衛星モデルでは、複数の事業者が利益を分配し合うことで責任範囲が不明確になり、ガバナンス上のリスクを抱えていた。新法はそれを是正し、ライセンス保有企業に監督権限と収益責任を集中させることで、透明性と持続性を確保する狙いがある。これによってマカオのカジノ産業は規模の拡大よりも効率性と収益性を重視する方向性へと舵を切った。
SJMやGalaxyは閉鎖施設で使用されていたテーブルやスロット機を他店舗へ移設し、従業員を再配置するなど急激な混乱を回避しながら再編を進めている。2020年時点で30軒以上あった衛星カジノは、現在わずか7軒となり統合の流れは年内にもさらに進む見込みだ。
量から質へ転換するマカオ、Galaxyが導く新たな成長モデル
Yogonetによれば、Galaxy Entertainmentは2025年にマカオ全体の粗ギャンブル収益(GGR)が300億ドルに達するとの目標に強い自信を表している。
2024年の同社収益は434億ドル、実質的な営業利益にあたるEBITDAは122億ドルと前年から22%増加。ギャンブル部門で24%、非ゲーミング部門でも19%増の64億ドルの成長を記録した。さらに、2025年には高級ホテル「カペラ・アット・ギャラクシー・マカオ」の開業を予定し、国際イベントやエンターテイメント事業の拡充も計画している。
衛星カジノを整理する一方で、こうした大規模直営リゾートの投資を進めることで、マカオ全体の収益基盤はむしろ強化されつつある。量より質を重視した再編こそが、Galaxyをはじめとする主要事業者の成長を後押ししているのだ。非ゲーミング領域の拡大はマカオがカジノ収益に依存する従来型モデルから、観光・エンターテイメントを融合した総合型リゾート都市へと進化しつつあることを象徴している。
この流れは、アジアのカジノ市場全体が持続的な成長を目指す上での新たな方向性を示しており、マカオはその最前線に立つ存在となっている。
さらに、SiGMA Worldの最新レポートによると、アジア太平洋地域のカジノ市場は2024年の約923億ドルから2033年に1,852億ドルへ倍増すると予想されており、今後10年で地域全体が新たな成長段階へと突入する見込みだ。