ALGS大会直前にコントローラー使用不可能に 海外製周辺機器導入のリスク
プロeスポーツ選手が大会でマイコントローラーを使用し、好成績を挙げる事例は少なくない。大会側が用意する機器ではなく、手に馴染んだ最高の一品で勝負をかけたいというのは選手としては当たり前の話だろう。
だがしかし、時にそれが許可されない事例が存在する。1月15日から開催中のApex Legends Global Series Year 5 Championshipに出場する選手の1人、ImperialHal選手。高いポテンシャルを誇る同選手のプレイに大きな影が差したのだ。その理由は、同選手が愛用するコントローラー「ZD Ultimate Legend」が大会開催12時間前に使用禁止の通告を受けたからである。

今回はこのコントローラーに関する問題やその周辺事情を掘り下げてみよう。
使用禁止の理由はいかに
今回問題とされたZD Ultimate Legendは中国を拠点とするゲーミングデバイス開発企業「ZD Gaming」から発売されたコントローラーだ。トリガースイッチが付いていたり背面パッドが付いていたり、超低遅延でありながら高耐久性を誇るボタンなど、ゲーミングデバイスとしてはかなり性能の高いコントローラーとなる。価格は99ドル、現在の日本円換算でおおよそ1万5千円と、相応の値段設定だ。
出場に際して不可能であると判定を下されたのは、コントローラーがモバイル経由でいつでも接続設定を変える事が出来る仕様と、コントローラー内に無効化出来ないマクロが仕込まれているという点だ。有線モードで 3000Hzの超高速ポーリングレートを誇り、2.4G経由で900Hz、Bluetooth経由で250Hz以上と非常に強固かつ高速な通信を行う事の出来る性能の裏打ちとして、環境に応じた最適な接続設定をユーザー側が行える可能性は高い。また「ZDアプリ」というアプリケーションと同期する事でコントローラーの調整を行えるようであるため、これが問題視されたものと思われる。
同選手は「eSports World Cupにて同コントローラーを使用していたが、問題なかった」という点を声高に強調しており、今回同じApex Legends Global Series(以下、ALGS)でありながら同コントローラーの使用が出来ない事にひどく落胆している事が見て取れる。
今回裁定の理由となった同コントローラーのマクロ機能などだが、それに加えてもう一つ明確にしなくてはならない要素が存在する。それが同コントローラーの、日本国内における使用を行う為の「技適マーク」が無い可能性である。
電波法違反を起こさない為に
ゲーマーであればコントローラー、特に最近ではワイヤレスコントローラーを用いる事が多くなっている。そのコントローラーの電池ケースなどの中、もしくは外箱などに以下の画像がないだろうか。日本国内でこのマークがあることが、コントローラーの使用条件である。

これは技適マークと呼ばれ、無線通信を行う際の周波数などの諸条件をクリアした上で付与されるものとなっている。特定小電力のトランシーバー、家庭やオフィスで使用するWi-Fi(無線LAN)、コードレス電話、Bluetoothの機器などは、技適マークが付いていれば、無線局の免許を受けないで使用出来るため、大なり小なり通信機器を日本国内で利用させたいメーカーには必須のマークと言えるだろう。
そして今回問題となったコントローラーは、この技適マークが外箱に印字されていないというレビューが寄せられているのである。これがどういう事なのかは、総務省の電波利用ポータルの該当項目の文言を引用する。
「一部の無線機を除いて、技適マークが付いていない無線機を使用すると、電波法違反(※)になる恐れがあります。また、技適マークが付いていても無線局を開設するためには総務大臣の免許又は登録を受けなければならない無線機(アマチュア無線、デジタル簡易無線など)がありますので、使用には十分ご注意下さい。(※電波法違反の場合、1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金の対象となります。また、公共性の高い無線局に妨害を与えた場合は、5年以下の拘禁刑又は250万円以下の罰金の対象となります。)」
この文章を見てお分かり頂けるだろうが、電波法違反は明確な罰金刑もしくは拘禁が伴う犯罪行為となっている。ImperialHal選手は今回の禁止裁定に「冗談だろ」とこぼしていたが、冗談どころか不正な機器使用を許可した場合は大会そのものが開催されなくなる可能性が大いにあるのは言うまでもない。
これを受けて中国の広州に本拠を置くゲームパッド開発企業のGameSir社は、ALGS規定準拠のGameSir G7 Proを購入したユーザーに対し、全額返金を行うと共にG7 Pro 8Kを無料でプレゼントするというキャンペーンを展開。Post内には最寄りの取扱店として「パソコン工房 札幌美しが丘店」の情報も併せて記載されている。同コントローラーはALGS仕様に準拠しており、また無線通信対応モデルであるProは技適取得済みである。そのため安心して利用出来る製品ではあるのだ。今回のキャンペーンは、既存のコントローラーが大丈夫か分からないという不安に怯える同製品ユーザーに対する温情という声が上がっている。
いずれにせよ、不許可となる可能性のあるハードがどういうものか、プレイヤーは事前に調べた上で法を遵守したハードを利用するべきである。まして、プロプレイヤーならば尚の事だ。公正公平な試合環境の構築を自ら放棄するようでは、今後の業界の倫理が問われかねない状況である。日本というeスポーツに対して批判的な論調の強い国は、サウジアラビアの様な国とは違うのだから。