株式会社サムシングファンのeスポーツ事業「ODDPLAN」終了へ eスポーツ事業継続の困難さ

eスポーツ業界は常に華々しい活躍が報じられ、毎日のようにスター選手の動向が注目されている。特にベットが盛んな海外ではその傾向は強く、SNSの注目度合いの高さも相まって暴言すら飛び交いかねないまでの熱狂ぶりを見せている。
そんな中で国内のeスポーツ事業にまた一つ暗い話題が飛び込んで来る事となった。株式会社サムシングファン(本社:大阪府大阪市、代表取締役:薮本直樹)は、2025年12月29日をもって、同社が運営するeスポーツ事業「ODDPLAN」を終了することを12月5日に発表した。所属メンバーについては、個別に面談を行い、一人ひとりの意向を最大限尊重したうえで今後の活動を可能な限りサポートするとしている。
今回の発表の中で同社は「これまで『ODDPLAN』を応援してくださったファンの皆様、ご支援いただいたスポンサーやお取引先の皆様、そして共に戦い、活動を盛り上げてくれた所属メンバーに、心より感謝申し上げます。」と感謝の意を示している。
同チームは2023年12月18日に発足。その1年後となる2024年12月21日、ストリートファイター6部門を新設。Fortnite部門のメンバー5名、ストリートファイター6部門の4名、その他ストリーマーなどを混成した十数名のメンバーで活動を続けていた。発足初期に加入したおらりん選手はCAPCOM Pro Tour 2024 World Warrior Japan Regional Finalへの進出を果たしている有力選手であり、ストリートファイター6のプロライセンスをJeSUにより交付されてもいるれっきとしたプロプレイヤーである。
しかし同社は今回の判断について『今後の事業ポートフォリオを鑑み、経営資源を当社の主軸である「動画DX事業」および「クリエイターエージェンシー事業」へより集中させることが、企業価値の最大化に繋がると判断し、事業を終了するという決断に至りました。』と説明を行っている。元々同社は動画製作を中心としたクリエイティブ活動を事業の中心に据えており、昨今のeSports需要の高まりを受けてチームを創設している。チームとしての活動も大会出場、大会解説、eスポーツコンテンツ制作やそれに伴う映像コンテンツの売り込みを収益の主軸として考えていた節が大きい。
だが戦績が振るわなければチームとしての運営は出来なくなるのは、残念ながら当然の事である。Fortnite部門では最高峰の大会となるFNCSではそこまで戦績を残すことが出来なかったようであり、FNCS Divisional Practice Cups Week 3: Asiaにてチーム総合順位24位というデータが残っている。また公式サイトの更新は同日で停止しており、新規の情報発信はX上のポストで選手の活動を追いかけて報告する形に留まってしまっている。チームの運営には戦績とそれに見合うスポンサーが必要であり、そして何よりチームを追いかけてくれるファンの存在は欠かせない。それらを十二分に集める事が出来なかった故に、今回の決断に至ったものだとしたらば、ファンもやるせないものがあるだろう。
チームの資金体制と国内eスポーツの盛り上がり事情
日本においてはeスポーツやそれにまつわる活動において、資金源となるのはやはりスポンサーだ。ファンに向けてのグッズや大会の賞金といった費用や各種コンテンツの売上も重要ではあるが、運営母体となる企業からの資金提供を受けてチームは運営される。その費用負担を少なくする為にもスポンサーの獲得は重要となるが、それには第一に戦績や各種コンテンツにつくファンに対する広告効果が重視される。クラウドファンディングなどでの資金提供についてはおおよそ下火であり、元々ファン以外に対する訴求力が国内では余り見られないeスポーツという分野では資金提供ならびにその後のリターンも含めて目立った結果が見られていないのが実情だ。
国内においてもeスポーツの大会賞金は総じて低く、一つ二つの大会で優勝を勝ち取るだけでは到底チームの運営費用を賄うことは難しい。現状海外での賞金制大会と比べて実入りが少ない以上、国内だけを軸に活動しようとすれば資金的な面での制約が非常に大きくなる。旅費も宿泊費もタダではないのである。
そして何より深刻なのは企業体力の問題である。この手の「資金的に余裕があるからこそ成り立つ事業」が年々減りつつある中で、中小企業が専業のeスポーツチームを維持しようとすれば相応の資金力が問われる事になる。もちろん社会人チームの様なeスポーツによる交流事業は行われているが、そこはあくまで「ゲームの上手い社会人」であり、専業のeスポーツプロプレイヤーではない。世界で戦うには専業化が必要である以上、それを維持する土台が固くなくては諸共に倒れてしまう事になりかねないのだ。
これからも盛り上がり続けるであろうeスポーツ業界において、少しでも多くのプロプレイヤーがeスポーツに邁進できる環境を整備する事は必要不可欠な状況だ。まさにポーズが許されないところにまで、その影響は出つつあるのかもしれない。