VARRELがSLT Seongnamを迎えてVALORANT部門再始動へ

プロeスポーツチームを運営するにあたっては適宜選手の確保や機材の調達、練習環境の提供などが必要である。そしてそれは戦績が伴いスポンサーがつくことで、おおよそ組織運営が回るようになっている。そのため戦績が今ひとつであると判断された場合は、運営コストなども勘案され部門そのものが廃止となる可能性は大いにある。
今回VARRELにおいて、その常識の一端が崩れ去る可能性が見えてきている。韓国のVALORANTチームであるSLT Seongnamを傘下に引き入れ、VALORANT部門を再始動させようという動きが報じられたのである。
復活の狼煙
12月12日、Riot Games, Inc.(米国)の日本法人である合同会社ライアットゲームズ(東京都港区六本木)は、Ascension Pacific 2025で優勝し、2026年のVCT Pacificリーグへの昇格を果たした韓国チームSLT Seongnam(SLT)が日本のeスポーツ組織であるVARREL(VL)として参戦することを決定した。
また同日、日本を拠点に国際的に活動するeスポーツチームVARREL(読み:バレル、運営会社:株式会社CELLORB、本社:神奈川県横浜市、代表取締役社長:鈴木文雄)は、韓国の新鋭チームSLT Seongnam(SLT)の選手・スタッフを迎え、2026年VALORANT Champions Tour Pacific(VCT Pacific)に参戦することを正式に発表した。
両報告をもってVARRELにおいてVALORANT部門が再始動すると共に、正式にリーグ参戦が運営側より認められる事となったのだ。
これまでのVARRELのVALORANT部門についてだが、2023年1月に同部門は結成されている。VALORANT Challengers Japan 2023シーズンを1年戦った後、VALORANT Challengers Japan 2024シーズンはMain Stageに進出を果たす。Split1、Split2とも4位の成績でプレイオフ進出を果たしたが、オフライン大会進出を逃し惜敗を喫することになる。戦績はそこまで向上しなかったのか、2024年9月より競技活動を一時休止するという状況に置かれていたのだ。
その間もファンからは「またVALORANTで戦うVARRELの姿が見たい」という声援が届いていたようである。VARREL側としても「再び、VALORANTの競技シーンで勝負して、国際舞台に立つ」という、水面下で再始動の機会を模索するに十分な理由を持ち続けていた事から、競技シーンからの完全撤退は考えていなかったようである。
VCT Ascension Pacific 2025 を制し急成長を遂げたSLTとVARRELが邂逅したのは丁度そういった判断を下す時期であったという。若く才能豊かな選手陣と成長を加速させるコーチングスタッフ、勝利に対する強烈な執念を持つSLTの姿勢が、VARRELが掲げるチーム理念「意志力」と見事合致。これを背景に、SLTの選手・スタッフをVARRELが迎え入れる形で、2026年シーズンを共に戦うという決断に至ったのである。
来季からSLTの選手・スタッフは「VARREL」としてVCT Pacificに参戦する事が決定しており、国際リーグで戦う強固な競技バックアップ体制の構築や日韓を繋ぐクロスボーダー型のチーム運営モデルの確立、日本国内の競技レベル向上を見据えたアカデミーチームの運営といった、日本と韓国を跨ぐ形での新しいチームモデルを作る事になる。株式会社CELLORB/VARREL 代表取締役社長 鈴木 文雄氏は「VALORANT部門の再始動に向けて機会を探し続けていた中、SLTという素晴らしいチームに出会えたことは、大きな運命だと感じています。彼らの情熱とポテンシャル、日本の運営体制を掛け合わせることで、VCT Pacificに新たな価値を提示できると確信しています。VARRELとして、再びVALORANTの舞台へ挑みます。温かいご声援をいただけますと幸いです。」とコメントしている。
海外プレイヤーとの協力態勢
大手チームともなれば海外プレイヤーを擁する事はそんなに珍しい話ではない。株式会社REJECTが運営するプロeスポーツチーム「REJECT」内にも、STREET FIGHTER部門に所属するAngryBird選手とBig Bird選手という海外選手が存在する。また両名はストリートファイター6の欧州大会である「SFL: Pro-EU 2025 Play-offs」にてチーム「Ninjas in Pyjamas」のメンバーとして参戦し、優勝を果たしている。こういった「チームを超えて参戦する」動きを容認している場合もあるのだ。
その点から見て今回の動き自体は特段驚くものではないが、一度休止した部門の再始動となると話は別である。VARREL側もそれに対するビジネス的なメリットがあると判断したからこその動きであるし、そして何よりそれを日本側・韓国側のチームメンバーやスタッフが承認しているというのは異例である。個人技である格闘ゲームではなく集団戦となるFPS系タイトルであれば、なおのこと文化の違いは色濃く出るであろう。そういったリスクを抱える事を承知で今回の決断に踏み切ったのは、それだけの勝算があると見ていいはずである。
一度消えた灯火を再び灯す事となったVARREL。今後の同チームの動向が吉と出るか凶と出るか、熱い視線が注がれている。