ZETA DIVISION BUSINESS CLANに品川学藝高等学校が加入、初の教育機関とのタイアップへ

 12月2日、品川学藝高等学校(所在地:東京都品川区、理事長:三浦裕明、校長:若林彰)は、今回プロeスポーツチーム「ZETA DIVISION」が運営する「ZETA DIVISION BUSINESS CLAN」に、全日制高校として初めて加入した事を発表した。

 ZETA DIVISIONの最近の活躍と言えば、カプコン株式会社が主催するトーナメント「ストリートファイターリーグ: Pro-JP 2025 Division F」にて6チーム中第3位で試合を終えており、プレイオフへの進出が決定。同イベントにおける有力なチームとして注目されている。今回同チームが運営するZETA DIVISION BUSINESS CLANについて見ていきつつ、eスポーツと教育機関の関わりを取り上げていく。

Zeta Division Business Clanと品川学藝高等学校のロゴ

ZETA DIVISION BUSINESS CLANとは

 eスポーツチームの運営においていちばん重要なのはスポンサーである。プロスポーツの世界では選手が使用する製品などにメーカー側がスポンサーとしてつく事で、プレーの現場で自社の製品やサービスをアピールし、より強い認知度を得るコマーシャルの手段としてチームに協力する体制が敷かれている。それはeスポーツであっても同じ事であり、またリアルのスポーツと違い動く金額においてはeスポーツは低く、スポンサーの支援体制についてはまだまだ発展途上である。そのため、より多くのスポンサーを獲得しチーム運営を盤石な物としていくのが、各eスポーツチーム運営企業に求められているものである。

 今回提示されたZETA DIVISION BUSINESS CLANというのはその一環であり、ZETA DIVISIONの活動やビジョンに共感した企業・団体による会員制組織を指している。所属している企業はゲーミングブランドを持つデバイスメーカーが中心となってはいるものの、トヨタ自動車株式会社の子会社であるトヨタ・コニック・プロやJCBカードといった企業の面々もパートナーシップ契約を結んでいる事が特徴だ。そんな中で今回、品川学藝高等学校が全日制高校としては初めて、同組織に加入を果たしている。

品川学藝高等学校の狙い

 学校法人三浦学園 品川学藝高等学校は日本最古の私立音楽学校をルーツに持ち、普通科と音楽科の2つの科を持つ全日制高等学校だ。同校は全日制高校としては非常に珍しく、eスポーツを体系的に学べる「普通科 eスポーツエデュケーションコース」を設置。また国際教育eスポーツ連盟ネットワーク 日本支部(NASEF Japan)というeスポーツを学業に対して積極的に取り入れる組織にも所属している。進学に重きを置く普通科のリベラルアーツコースとは違い、進学をあくまで手段の一つとし、eスポーツを活かしてコミュニケーションやクリエイティビティを促進するというよりクリエイターサイドに近い教育姿勢を特徴としているとの事だ。

 今後は同校の取り組みとして、ZETA DIVISIONを運営するGANYMEDE株式会社との連携を行い、eスポーツの現場の最前線に触れられる特別講義をはじめ、ビジネスの実態を学ぶキャリアセッション(オフィスツアー)の実施を予定しているという。これを軸にしてeスポーツプレイヤーとして大成する選手や、プレイイベントなどの現場に携わる人材を増やしていくという目標が見えてくるものである。

 実際、同校は東京ゲームショウにおいて、慶應義塾大学と共同でブースを出展している。またeスポーツエデュケーションコースの講師には慶応義塾大学の教授を招くなど、同大学との関係はかなり深いものと思われる。ZETA DIVISIONとしてもこれまで参画する事が難しい教育機関と連携していく事で、若年層に対する知名度の向上や将来のチーム選手の模索、教育基盤の拡充といった新規事業展開など様々なチャンスを掴む事が出来る。お互いにとってWin-Winの関係となる可能性は非常に高い。

 特に若年層が大きく注目しているeスポーツ業界において、若手プレイヤーの確保や認知を広げる事は急務と言っていい。選手生命の短い業界であるからこそ、有能な選手を見出して育成すると共に、その育成をサポートする事や、関連企業へのアピールによる支援体制の構築など、eスポーツのプレイヤー増加の為に必要な施策は数多い。そういった取り組みは、現状必ずしも大手企業に対しては理解が浸透している状況ではない。教育現場から意識の変革を行う事で、社会におけるeスポーツの立ち位置をより明確な物としていく事は、業界全体の発展において有益なものであると考えられる。

 初めてeスポーツチームと全日制高等学校が手を組む事となった今回の事例であるが、これをファーストペンギンとして多くの教育機関がeスポーツチームとの連携を行う流れが生まれる事を期待したいものだ。

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